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2024.04.27

誰でもふらっと立ち寄れて、チーズを身近に感じられる場所に

Sense of Taste

 
SHIBUYA CHEESE STAND
シブヤチーズスタンド
 
チーズ好きの方は、結構周りに多いように思う。私もその1人である。クラッカーに乗せて食べても美味しいし、グラタンやピザには欠かせないし、ワインのお供にも最高である。モッツァレラ、カマンベール、ゴルゴンゾーラ……どれも魅惑的だ。チーズは製造方法や使用する原料によって、実に1000種類を超えると言われている。そんな数あるチーズの中で、今人気急上昇中なのが、「ブッラータチーズ(以下、「ブッラータ」)」だ。ブッラータは、イタリア南部のプーリア州で、1920年頃から作られているフレッシュタイプのチーズである。特徴は、巾着型というその形状。白くて、つるんとしていて、ミカンくらいの大きさだ。このブッラータが日本で話題となったのは、ここ数年のことなのだそうだ。もしイタリアから日本に運ぼうとすると、店頭に並ぶまでに賞味期限が切れてしまうため、なかなか日本ではお目にかかれなかったチーズなのである。そう、ブッラータは鮮度が命なのだ。そんな中、2012年東京の渋谷に、手作りの新鮮なブッラータを購入できるお店が誕生した。それが今回取材した「SHIBUYA CHEESE STAND」、日本で初めてブッラータの製造・商品化に成功した店である。
 
 
「弊社の代表が、イタリアで出来立てのチーズに出会ったのがきっかけです。新鮮なチーズの美味しさを日本でも広めたく、創業しました。」と語ってくれたのは、広報の米田さん。渋谷は文化の発信地。いろんな人が集まるこのまちで始めたかったそうだ。オープン以来、「街に出来立てのチーズを」というコンセプトのもと、フレッシュチーズをメインに毎日手作りチーズを製造・販売している。「”ガソリンスタンド”や”ミルクスタンド”みたいに、誰でもふらっと立ち寄れて、チーズを身近に感じられる場所にしたいから”CHEESE STAND”です。」なんだか、とても納得できる素敵な命名である。そしてここの看板商品のひとつが「東京ブッラータ」だ。
 
  

CHEESE STANDの朝は早い。午前3時から作業が始まる。「東京ブッラータ」の原料は、生乳、生クリーム、塩その3つだけ。実にシンプルだ。ミルクは、東京の清瀬市から届く。ミルクと言えば、北海道産かと思いきや、実は東京なのだ。「ミルクを運ぶ工程でガタガタ揺れると、泡立って表面積が増えて酸化の原因になることがあるのです。」鮮度の高いミルクを仕入れるには、北海道では遠い。東京のミルクなら新鮮なまま届くし、実はとても品質が高いのである。「”東京のミルクを使って東京で作る”ことに価値を見出したかった。」と米田さん。なるほど、と納得してしまう。
モッツァレラチーズと同じ工程で生地を作った後、薄く延ばして袋状にする。その中に生クリームと細かく刻んだモッツァレラチーズを混ぜたもの(ストラッチャテッラ)をたっぷりと詰める。詰めたあと、巾着の形に閉じる。この時、イタリアでは植物の葉っぱで結ぶ。しかし、日本では食品に関係する法律に照らすと、葉っぱやビニールは受け入れられにくい。何で結べばよいのか……。試行錯誤の末に導き出した答えは、モッツァレラの紐だった。今ではよく見るこの結び方も、実はCHEESE STANDのオリジナルだったのだ。こだわり抜いて完成したチーズは、11時のお店のオープンに合わせて工房から運ばれる。出来たてほやほやのブッラータを直ぐにでも味わいたいところではあるが、米田さんはこう言う。「ブッラータは、中の生クリームとチーズの繊維が馴染む製造3日後あたりが一番美味しいんです。」と。なおかつ消費期間は短く、製造より5日間だ。待ちに待ったベストなタイミングでチーズを口にする自分を想像するだけで、妙に気分が高揚してくる。



そんなこだわりが詰まった「東京ブッラータ」。白いつやつやのもち肌のような薄い表面にナイフを入れてみる。ナイフを通してプツンという感触が手に伝わる。と、すぐさま切れ目から繊維状のモッツァレラと生クリームがトロンっと溢れでてきた。ブッラータは、イタリア語で“バターの様な”という意味。ドキドキしながら口に入れてみると、バターのような濃厚さとクリーミーさにうっとりとする。続いて、モッツァレラ独特のシャキシャキした食感。チーズのフレッシュさとミルクのジューシーさがバランスよくまとまった、なんと贅沢な味わいだろうか。ほっぺたが落ちるとはまさにこのことだと思った。「常に改良を重ねたその味には、かなり自信があります。」と米田さんが語ってくれたとき、その表情は誇らしげに輝いていた。
 


取材の最後に、今後の展望を伺った。「工房のスタッフは朝早くから頑張っているし、レストランも毎月シーズナルメニューを考えています。スタッフ全員がチーズと真摯に向き合っているので、それを分かってくれるお客さまが増えたらいいなと思います。」米田さんがそう語る笑顔には、さらなる高みを目指す心意気や自社への深い愛情が感じられた。
美味しいものは人を笑顔にする。美味しいものは人を幸せにする。美味しいものには、人生を豊かにする力がある。本場イタリアに負けないこだわりで作られた「東京ブッラータ」。オリーブオイルと塩をかけてシンプルに、または季節のフルーツや赤身のお肉と一緒に。様々な食材にマッチするニュートラルで美味しいブッラータを、大切な人と一緒に楽しんでみてはいかがだろうか。きっと豊かな人生のひとかけらになるに違いない。
 

- Information -
施設名:SHIBUYA CHEESE STAND 
住所:東京都渋谷区神山町5 - 8
電話番号:03 - 6407 - 9806
営業時間:11:00 ~22:30、日曜日:11:00 ~ 20:00 (定休日:月曜日)
 
- Interviewer -
Kanako Sato, Marketing Communications, Specialist