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2024.04.27

「美しく楽しく新しくあめを超えて」自分たちにしかできない新たな飴の可能性を……

Sense of Sight

 
AMEYA EITARO
あめやえいたろう

ほんのりと色づいた艶やかで潤いのある唇は、いつだって女性の憧れである。ひと塗りでぷっくりとした唇に仕上げてくれて、今日はどの色にしようかと悩んでしまうほど、カラーバリエーションも豊富なラインナップは、見ているだけでワクワクしてくる。そんな可愛らしいリップグロス……ではなく、実はこれ、リップグロスのような見た目に仕上げた「みつあめ(蜜飴)」であるというのだから驚きだ。コスメに似せた「飴」だという事実を知らなかったら、騙されてしまう方も多いだろう。今回は、そんな驚きの飴、そして女性のおしゃれ心をくすぐるキュートな飴「スイートリップ」をご紹介しよう。
 
 
この斬新な商品を開発したのは、東京都日本橋に本店を構える和菓子店「榮太樓總本鋪 」が手がけるブランド「あめやえいたろう」だ。榮太樓總本鋪は、1818年(文政元年)の創業以来200年以上続く老舗である。昔ながらの「榮太樓飴」や「梅ぼ志飴」などの 看板商品を持ちながら、東京というまちの発展とともに様々なブランドを展開し、和菓子を広めてきた。例えば、若い世代でも和菓子を低単価で気軽に楽しめる「にほんばしえいたろう」や、糖質控えめで健康面を意識した和菓子「からだにえいたろう」など、口にした方もいるだろう。そのような中で「あめやえいたろう」は、榮太樓總本鋪の原点である「飴」に特化したブランドである。コンセプトは「美しく楽しく新しくあめを超えて」。商品には全てターゲットがあるものだが、「あめやえいたろう」のそれは30代~50代くらいの人たち。「自分へのご褒美として、あるいは誰かへのお洒落なプレゼントとして、そんな選び方をする感度の高い人に向けて発信しているブランドです。」そう教えてくれたのは、企画開発を担当する川口さん。老舗の和菓子屋がなぜスイートリップのような独創的な商品を開発したのか。そこには、飴の可能性に挑戦し続ける人々の熱い想いがあった。
 


榮太樓總本鋪の瓶に入った美しいみつあめをご覧になったことはあるだろうか。見るからにとろ~っとした飴は、キラキラと輝き、それほど飴に興味がない方でも手に取ってしまいたくなる不思議な魅力がある。そんなみつあめを、もっと飛躍させたい。自分たちにしかできない新たな飴の可能性を……と模索していた時、当時の担当者がドラッグストアの店内で、あっと思い立った。「この容器にみつあめを入れたら面白いんじゃないか。」そう思ったのが、店内に並ぶリップグロスだったのだ。スイートリップの誕生は、女性の日常的な光景と斬新な閃きが結びついて生まれた。現在もデパ地下の「あめやえいたろう」の店舗は、その一角だけ異彩を放っている。通常の和菓子店舗では、ショーケースを横に見るが、こちらは、まるで宝石を眺めるかのように上から覗き込むスタイルだ。



スイートリップの魅力は、美しいパッケージやコスメ調のデザインだけではない。あれほど自然な発色で鮮やかな色彩にもかかわらず、なんと香料や着色料を一切使っていないのだ。その色の作り方を訊いて驚いた。飴の色は、果物の皮から実までまるごとピューレにしてそれを添加しているというのだ。例えば艶やかな色合い、コクのある甘み、すっきりとした酸味、そして豊かな柑橘の香りを楽しめる「宇和島ブラッドオレンジ」。温暖な気候で太陽の明るい日差しの恩恵を受けて育った愛媛県宇和島産のブラッドオレンジを使用している。「これを作るにあたって、生産地の農家さんを訪れたので、特に思い入れのある味です。」通常、農家は自分たちが出荷した果物が、最後どういう状態になっているか知らないことが多い。だから、このスイートリップを持っていくと驚かれるそうだ。「実際舐めてもらうと、果物の味が思ったより感じられびっくりしたという反応が多いです。」と川口さん。自分たちが大切に育てた果物を、ピューレにして皮まで使ってくれている事実を知ったら、どれほど嬉しいだろう。
さらに、川口さんはこだわりを語ってくれた。「1本舐め切った時にくどくないよう、飴になって美味しい果物を選んでいます。」果物の色合いや味だけではなく、「あめやえいたろう」が最も情熱を注ぐ「飴」との相性こそが何よりも大切なのだ。

そんな過程を経て完成したスイートリップは、ただ舐めるための飴ではない。バッグに1本忍ばせておいて、疲れた時の糖分補給にすることはもちろん、プレーンヨーグルトにかけたり、紅茶に入れる砂糖代わりにしたりと、その用途は様々である。そこにも、飴は自由なモノだという「あめやえいたろう」の考え方があり、お好みの召し上がり方で楽しんでほしいという想いが込められている。



いつの時代も、飴は私たちにささやかな幸せをもたらしてくれるお菓子だ。従来の枠にとらわれない斬新な発想で、人々を魅了する「あめやえいたろう」。そこには、自社の伝統的な飴への誇りと、時代に合わせた新しい飴を生み出すという強い信念がある。日々奮闘する川口さんは「普通の誉め言葉って“おいしかった”とか“また買いたい”とかだと思うんですけど、 “ナニコレ!”と言われるのが一番嬉しいかな。そういうものをこれからも作りたいなと思います。」と笑顔で語ってくれた。目で見て楽しい。食べて美味しい。驚きとトキメキを届けてくれるスイートリップを、日頃頑張る自分へのご褒美に、あるいは大切な人へのプレゼントに選んでみてはいかがだろうか。手に取った瞬間に、大切な人が「ナニコレ!」と驚く顔と、その後の笑顔を想像して……。 



- Information -
施設名:榮太樓總本鋪日本橋本店 
住所:東京都中央区日本橋1-2-5
電話番号:03-3271-7785
営業時間:10:00~18:00 (定休日:日曜日・祝日)

 - Interviewer -
Kanako Sato, Marketing Communications, Specialist